あなたの論文を磨き上げる、25のテクニック

MDPIは2021年6月に設立25周年を迎えました。1996年に最初のジャーナルMoleculesを創刊し、オープンアクセス出版のパイオニア企業として活動してきたこの四半世紀の中で、300以上のジャーナルを創刊・運営してきました。節目の年を迎えるにあたり、いままで以上に皆様の研究成果を速く広く発信することにコミットしていきたい、とスタッフ一同考えております。

そこで本記事では、論文執筆における25個のポイントをご紹介します。この情報が皆様の論文執筆のお役に立てばと願っております。

1. 具体的で正確なタイトルをつける

論文のタイトルは、内容を正確かつ簡潔にまとめたものにすることがポイントです。その際、分野特有の専門用語を使わずに「できたこと・わかったこと」が伝わる表現になるようご留意ください。

2. これはサブタイトルにも当てはまります

上記のポイントは、論文内のセクションタイトルや図表のキャプションにも当てはまります。具体的かつ簡潔に説明することで、読者にとって要点がとらえやすい文章になります。

3. 目を引くようなアブストラクトを書く

論文のアブストラクトは読者が最初に目を通す箇所ですので、研究の背景から研究成果の重要性までを簡潔かつ説得力のある文章で執筆することがポイントです。良いアブストラクトには、研究の大きな潮流の中でご自身の研究がどこに位置するのか、といった情報が明記されています。

4. グラフィカルアブストラクト・ビデオアブストラクトを活用する

ジャーナルの中には、文章とは別に画像や動画を論文要旨として採用しているものがございます。このようなジャーナルへご投稿の際は、ぜひご活用ください。内容が一目で分かる画像や動画は、多くの読者の興味を惹くことができます。

5. 適切なキーワードを選択する

投稿論文にキーワードの記入が求められている場合、研究の内容を端的に表す、タイトルに含まれていない単語を選択することがポイントです。ジャーナルによって使用できない単語があるのでご注意ください。例えばElsevierのSoil Biology & Biochemistryというジャーナルでは、「soil」という単語はキーワードとして使用できません。

6. 研究成果の新規性を明確に表現する

論文が査読される過程で最も重視される項目のひとつに「研究の新規性」が挙げられます。既に報告されている関連研究を適切に引用した上で、何が違うのか、あなたの研究によって分野がどのように前進したのかを表現することがポイントです。

7. シンプルな構造を心がける

研究そのものは迷路のように複雑な過程を経るものですが、いざ論文を執筆する際にはシンプルな構造に落とし込むことがポイントです。特有の技術用語や専門用語を避け、専門外の研究者が理解できる文章で端的に成果を発表することで、より多くの読者の興味を惹く論文へと仕上がります。

8. 研究成果の重要性を明確に表現する

論文には新規性だけでなく、重要性も明記することがポイントです。分野に何がもたらされたのか、どのような予想外の可能性が拓かれたのか明確に記載された論文は、査読者・編集者・読者にとって魅力的に映ります。

9. 自己剽窃に気をつける

ご自身の出版物から文章を引用する場合は、文章表現を変える等、自己剽窃にならないようにご注意ください。引用箇所が短い場合は、引用符で文章を囲むようにしてください。

10. ジャーナルのテンプレートを用いる

テンプレートが利用可能な場合は、雛形に沿って論文を執筆すると良いかもしれません。体裁が綺麗に整った原稿は、査読者や編集者に良い印象を与えます。なお、MDPIの各ジャーナルのテンプレートはウェブサイトからダウンロードいただけます。

11. ジャーナルのスコープに合わせる

ジャーナルや特集号には、それぞれが取り扱う研究分野のスコープが存在します。スコープの広狭はありますが、ご投稿予定の論文が範囲内であるかを事前に確認することがポイントです。論文の導入部にスコープを述べる段落を追加しても良いでしょう。

12. 本当に必要な情報だけを発表する

論文の結論と関係が薄い情報は、論文の意図をぼやかしてしまう可能性もあるため、省いた方が良い場合があります。論旨と関係が薄い箇所は別論文として発表するなど、論文の構成を見直しても良いかもしれません。

13. 論理的な流れを意識する

論文の導入から結論まで、論理的につながっているかを折に触れて見直すことがポイントです。その際、論理の流れに飛躍や矛盾がないかを確認するために、一度頭をリセットしてから見直すと良いかもしれません。

14. 共著者とコミュニケーションを取る

共著論文の場合は、共著者と頻度よく議論することがポイントです。議論を重ねることで論文の方向性や内容が洗練され、お互いの担当した文章をチェックすることでより読みやすい表現が見つかるかもしれません。

15. 同僚との意見交換の機会をつくる

研究は孤独なものですが、団体戦の側面があることを忘れないことがポイントです。共著者や同僚と意見交換をすることで、自分では見落としていたことに気づくかもしれません。また、同僚と話をすることでリフレッシュでき、新しい気持ちで執筆作業に戻ることができます。

16. 実験項から書き始め、導入部と結論部は最後に書く

これはよく言われていることではありますが、とても大事なテクニックです。論文を書き進めるうちにどうしても論調に変化が生じてしまうため、最初に実験項(MethodやResult)から書き始め、集中力が必要な導入と結論を最後にまとめて書くことで、一貫したトーンで書き終えることができると言われています。

17. データの表現や図表を大事にする

論文の中で最も重要なものはデータです。適切なデータを用いて、可能な限りわかりやすい図表やグラフを作成することがポイントです。また、グラフや画像の解像度が十分に高いものかご留意ください。

18. Pythonパッケージを活用してグラフを作成する

上記に追加して、MatPlotLibやMATLABを活用することで高精度なグラフを簡単に作ることができます。

19. 正確な英語表現を確認する

論文の英語表現を可能な限り正確にしておくことがポイントです。そのために外部の英文校正サービスをご利用することもあるかもしれません。MDPIでは、論文のご投稿先に寄らずにご利用いただける英文校正サービスをご用意しています。詳細はこちらをご覧ください。

20. Instructions for Authorsを確認し、体裁を整える

各ジャーナルは、Instructions for Authorsというページを用意しており、論文中の表現に関する細かなルールを指定しています。ご投稿前にご確認の上、必要に応じてご修正ください。

21. Author ContributionやAcknowledgementをしっかりと書く

論文で発表する研究に協力した同僚や共同研究者について抜け漏れがないように記載することがポイントです。また、研究資金や助成金についての謝辞もご記載ください。

22. 引用文献を確認する

出版の過程で、本文中の主張に適切な引用がなされていない論文を多くお見かけします。論文中では主張や事実に文献が正しく引用されているかをご確認ください。ひとつの文献を繰り返し引用するのではなく、文脈に応じて異なる文献を引用することがポイントです。EndNoteやMendeleyなど、本文中の引用フォーマットを整えるのに役立つツールもございます。

23. 利益相反を申告する

もし論文の結論や結果に影響を与えうる組織や団体との関係がある場合は、必ず論文中で申告しなければなりません。これには金銭的あるいは非金銭的な関係も含まれていることにご留意ください。

24. もう一度、最初から通して読む

これは昔から言われているテクニックではありますが、最後にもう一度目を通すことは、見落としていた小さなミスを発見することに役立ちます。一晩寝て、リフレッシュしてから読み直すことで、論理の一貫性を再チェックでき、自信をもって論文を投稿できるでしょう。

25. 出版された論文をオンラインで宣伝する

これは論文が出版された後のお話です。オンラインで共有し宣伝することで、多くの人の目に留まり、閲覧回数や被引用回数を伸ばすのに役立つかもしれません。特にTwitterやLinkedInなど、研究者が多く登録しているソーシャルメディアを用いることで、より効果的に研究成果を発信することができます。

ご一読いただきありがとうございました。もしよろしければ、上記以外に論文執筆の際に心掛けていらっしゃることなどをコメント欄にてお聞かせください。

本記事はMDPIの英語ブログ『25 Ways to Improve Your Research Paper』を元に書かれたものです。元記事はこちら

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