集合知の共有・オープンアクセスがもたらすメリット

2020年という年は、オープンアクセス出版(OA出版)にとって意義深い一年となりました。Dimensionsがまとめたこの記事によると、この年、OA出版がはじめて購読モデル(Subscription-based publishing)を上回りました。すなわち、OA出版モデルで発行された論文数が購読モデルでの発行数を超えたのです。

多くの方にとって、OA出版モデルはまだ「新参者」として認識されているかもしれませんが、確実に急成長しています。ただ、OA出版モデル自体は比較的新しいものではありますが、実はその考え方の根幹は中世ヨーロッパまで遡ることができるのです。

OA出版とはその名前の通り、科学研究の成果へ誰もがアクセスできるようにすることを目的としています。Online Etymology Dictionaryによると、科学の成果にアクセスする、という文脈で”access”と”science”という英単語が初めて用いられたのは14世紀だとされています1,2。14世紀末には、”science”という単語に「人類の集合知(特に体系的な観測・実験・推論によって得られたもの)」という意味が含まれるようになりました。そのような流れの中で、1460年にスイス バーゼル市にバーゼル大学が設立され、MDPIに縁の深いバーゼル市にも科学研究の拠点が誕生しました。

コミュニケーション革命の今昔

OA出版は、それまで金銭面で制限があった科学研究成果へのアクセスを解放し、世界中の誰もが研究成果に触れられるようにしました。インターネットの普及と発展も相まって、OA出版はいまや科学情報の共有に革新をもたらす存在になっています。同様に、中世ヨーロッパの大学革命も、当時最先端のコミュニケーション技術であった印刷技術を利用して盛り上がりました。この印刷技術は1440年代にドイツの金細工師ヨハネス=グーテンベルクによって発明されたものでした。

OA出版は一見新しいもののように捉えられていますが、そのコンセプトは中世ヒューマニズム運動の中に既に発見することができるのです。

科学コミュニティへの利点

話を21世紀に戻します。さて、オープンアクセスのメリットとは何でしょうか。もし研究者が論文を出版する際にOA出版を好むのであれば、それはなぜでしょうか。また、OA出版を通してどのようなことが可能になるのでしょうか。

OA出版モデルには、従来の購読モデルと比較して次の4つの大きな特徴があります 。

OA出版は、データ駆動型の出版モデルです。すなわち、デジタルであることを活用し、従来の出版モデルよりも素早く研究成果を公開することができます。MDPIのようなOA出版社は、OA学術誌という科学の成果やアイデアを迅速に公開するプラットフォームの運営を通じて、利用者に寄り添った出版を行っています。

ここで、OA出版が研究者の皆様にもたらすメリットを6点ご紹介します。

1. 多くの被引用数・インパクトにつながる可能性

論文を制限なく公開することで、より多くの読者を獲得する可能性が高まります。また、「ペイウォール(購読・アクセス費用による障壁)」がないことは、世界のどこかの研究者が論文執筆の引用文献を探す際に優位に働くかもしれません。多くの研究者がOA出版で論文を発行し、その論文が引用されやすくなるのであれば、その研究分野の流れに組み込まれ、レガシーとして長く残り続けることになります。

2. 幅広い読者層に届く可能性

OA出版で公開された論文は無料でアクセスできるため、多様な分野の研究者だけでなく、発展途上国やまだ当該分野が発展していない国の研究者が読むことができるようになります。このことは研究分野への関心を潜在的に高めることにつながります。

3. 著者の知名度につながる可能性

出版された論文に誰でもアクセスできるようになることで、著者の認知度につながる可能性も高まります。適切な研究者に論文が届くことで、将来の共同研究やアカデミックポストの獲得につながるかもしれません。

4. 科学的イノベーションへの貢献

出版された論文に誰でもアクセスできるようになることで、科学的なイノベーションを促進することにつながります。OA出版で発行された論文は迅速に公開されるため、科学的なブレイクスルーにタイムリーに貢献する可能性が高くなります。これは、公衆衛生的な危機(疫病の蔓延など)に代表される科学的な進歩が急務となる状況において、非常に重要な意味を持っています。

5. 著作権を保持することができる

従来の購読モデルでは、著作権を出版社が保有する場合がほとんどでした。その点、OA出版で公開された論文は通常クリエイティブ・コモンズのライセンス下で出版されるため、論文の著作権は著者が持ち、拡散や二次利用を容易にします。

6. コミュニティとして出版する意識

OA出版のもうひとつのメリットは、誰もが簡単にアクセス・二次利用できることで醸成される「コミュニティ」の意識です。OA出版で発行された論文は、他の研究者が制限なく参照・利用することができるため、その研究対象への議論が活発化し、より広い科学コミュニティの中でその対象が研究されるようになります。

信頼される出版社として

MDPIは、世界中の科学コミュニティに価値ある出版プラットフォームとして認識していただけるように活動を続けてきました。著者の皆様に、より便利で使いやすいサービスを提供できるよう改善を続けています。また、MDPIは研究成果の公開の迅速性に価値を置いており、優れた研究成果が待ち時間なくオンラインで公開されるようなサービスをご提供しています。私たちのサービスが、皆様の研究成果をより効率的に発信することに貢献できればと願っています。

MDPIは、最新の科学情報を迅速に世界中の科学コミュニティに届けることを目的として設立されました。私たちのこれまでの足跡は、全てOA出版モデルとそれを支持してくださっている研究者の皆様によって支えられています。

ご一読いただきありがとうございました。弊社や弊社のサービスへのご質問などございましたら、お気軽に info-tokyo@mdpi.com までご連絡ください。

私たちの目標は、世界中の科学コミュニティに信頼される出版プラットフォームとして価値を提供していくことです。ご提供サービスの改善と厳格な査読システムの徹底、社内システムの効率化を妥協なく行っていくことで、今後も皆様の期待に応えられるように精進していきます。MDPIの出版プロセスの詳細は、Instructions for Authorsのページをご覧ください。


※ 本記事はMDPIの英語ブログ『Sharing ‘Collective Human Knowledge’: The Benefits of Open Access Publication』を元に作成したものです。元記事はこちら

1 access | Search Online Etymology Dictionary (etymonline.com) (Accessed 15 September 2021).

2 science | Search Online Etymology Dictionary (etymonline.com) (Accessed 15 September 2021).

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