「編集委員に聞く|Polymers・Sci・Technologies誌」遊佐真一先生|兵庫県立大学

MDPI日本支社では、弊社ジャーナルの編集委員の先生方にインタビューを行っております。論文の査読や採択に携わっている先生方の生の声をお届けすることで、研究者の皆様にとって何らかのヒントになることを願っております。

第1回目は、Polymers誌とSci誌およびTechnologies誌の編集委員(Section Editor in Chief/ Advisory Board/ Editorial Board Member)、遊佐真一先生(兵庫県立大学)にお話を伺いしました。

遊佐真一 (ゆさしんいち)先生 | 兵庫県立大学

大阪大学大学院理学研究科高分子科学専攻の蒲池幹治教授研究室の出身です。2000年に大阪大学で博士(理学)を取得しました。2008年から現職の兵庫県立大学大学院工学研究科応用化学専攻の准教授です。

先生のご専門分野を教えてください。

高分子の精密合成で、構造の制御された刺激応答性の水溶性高分子を合成しています。pH応答性の高分子を用いたセッケンで洗い流せるサンスクリーン剤の開発や、インクのにじみ防止用のpH応答性ゲル化剤などの開発を行ってきました。

先生がその分野に進むに至った理由や背景を教えてください。

学生のときから、色々な人との出会いがあり、たまたま制御ラジカル重合について知り、これまでにない可能性を感じたので、制御ラジカル重合に関連した研究をはじめました。

現在取り組んでいる課題やこれから取り組みたい課題について教えてください。

高分子の精密合成の技術を活かすことで、耐久性の高い燃料電池用の電解質膜や、海洋プラスチック問題を解決できる分解性高分子に関する課題に取り組みたいです。高分子の精密合成をコア技術として、さまざまな分野に応用可能な高分子を開発したいと思っています。

先生のご研究人生の中で、一番の思い出を教えてください。

研究を行っているからこそ、出会えた人達が沢山います。自分では到底思いつかないようなことを考えている人と話したりできるのは、とてもエキサイティングです。

先生のご専門分野で、注目されている研究者がいらっしゃいましたら、その方の研究内容などを含めてご紹介ください。

大阪工業大学の藤井秀司先生のリキッドマーブルに関する研究は、毎回新しいアイデアで驚かされます。リキッドマーブルとは、疎水性粉末で液体を安定化した微粒子のことです。また藤井先生は、ご講演がとても上手なので、話しに引き込まれます。

先生のご専門分野の若手研究者の方々に向けて、伝えたいメッセージがございましたらお聞かせください。

研究テーマの設定や研究方法など、何が正しかったのかは、未来にならないと答えが出ないので、自分が今、興味のあることをとことん追求するしかないと思います。結果は後からついてくるものだと思います。ただし、自分の考えが古くなるなど、独りよがりにならないよう、常に新しい論文に目を通して、学会に参加して情報を集めることは、研究の方向性を決める上で重要だと思います。

最後にオープンアクセス出版についての印象をお聞かせください。

文献を引用したいときに、オープンアクセスならばネットですぐ内容を見られるのでとても便利です。また全ての論文をオープンアクセスにすることで、研究により得られたデータを誰もが見られる状態にすることは、科学技術の発展を加速してくれると期待できます。近いうちにオープンアクセス出版がジャーナルのスタンダードになると思います。

遊佐先生から読者へのコメント

現在MDPIのPolymersでState-of-the-Art Polymer Science and Technology in Japan (2021、2022)という特集号で論文を募集しています。この特集号では日本の高分子研究に関連した論文を募集しています。詳しくは下記サイトをご覧ください。

また、現在高分子の精密合成を行える博士号を持つ研究員を募集しています。ご興味がありましたら、遊佐までメールで連絡をお願いします。

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