By Meritxell|January 31, 2022

英語論文を執筆する上で知っておきたいこと No. 1

今回の投稿は『英語論文を執筆する上で知っておきたいこと』というシリーズ記事の第一弾となります。こちらのシリーズでは、その名の通り英語論文を執筆する上で知っておきたいことをいくつかの要点として紹介させていただきます。特に大学院生の皆様や、普段あまり英語論文を執筆されないという研究者の皆様の参考になりましたら幸いです。

こちらのシリーズでは、査読付き国際誌へ送るための原稿作成における「scientific writing」(科学系の英文作成)に焦点を当てさせていただきます。

1. Scientific writingとは?

Scientific writingは、主にジャーナル論文(例:Article、Review、Short Communications)として研究を報告したり特定の題材について議論する場合に用いられることが多いかと存じます。Scientific writingの特徴は、その明確性・明示性(clarity)にあると言われています[1]。その理由として、筆者自身のみが読むものではなく、「他人に読んで理解してもらうもの」とされているからです[1,2]。なぜその研究が行われたのか、いつどのように研究が行われたのか、研究結果とその解釈などの全てを「読者が理解できる状態にする」ことが求められます。読者が理解できない場合、「透明性に欠けている」、「表現が曖昧である」などと他の研究者から指摘されることもあるため[1] 、文章や構成に細かく配慮する必要があります[2] 。オープンアクセス・ジャーナルへご投稿される場合には、読者層も広がる可能性がありますので、多様な読者層をイメージして執筆することも重要になるかもしれません。

2. 論文を執筆する上でやってはいけないこと

英語論文だけに限りませんが、論文を執筆する上で避けなければならないことがあります。それは、既存の文(sentence)、文章(multiple sentences)、段落(paragraph)などをコピーし、そのまま利用することです。原文引用(quote)の際には、引用符の利用と文献引用(citation)が求められます。引用符を利用せずに、原文をそのまま利用した場合、盗用・盗作と判断される可能性がありますので、ご注意ください。また、既存の研究や文献を説明する際には、文献引用とあわせて「自分の言葉にして書く」こと(paraphrase)が求められます。

豆知識
引用符についてですが、イギリス式スペリング(例:colour)にて執筆された論文の場合は、一重引用符、アメリカ式スペリング(例:color)にて執筆された論文の場合は、二重引用符が使用されることが多いかと存じます。

This is an example of single quotation marks in use.
This is an example of double quotation marks in use.”  

スペリングについては、自由に選択できるジャーナルが多いかもしれませんが、一貫性が重要視されます[3] 。

3. わかりやすい英文を書くコツ

3.1. 明確な言葉をつかう

論文を「多くの読者が理解できる状態」にするには、簡潔で明確な文章を作成することが勧められています[1–3]。仮に国際誌に掲載されたとしても、読み手が英語母語者とは限りません。より多くの読み手に理解されるには、「できるだけわかりやすく明確な言葉を選ぶ」という姿勢で執筆すると伝わりやすいかもしれません。「説明が必要な専門用語」(jargon)については、「かもしれません」が続くので、明確な定義を早い段階で読者に示すといいでしょう[4] 

3.2. 能動態を活用する

論文執筆においては「受動態がよく使われる」ということを耳にされたことがあるかもしれません。しかし、能動態を活用した方が英文は簡素になることが多いと言われています[1–3]。「It was found that…」というよりは「I found that…」もしくは「We found that…」と構成した方が、一つの単語(word)が節約され、文が簡素化します。この「単語の節約」は、投稿規定にて文字制限がある場合、必要になるかもしれません。また、能動態の活用を促すジャーナルもございますので、投稿規定を事前に確認することを推奨いたします。

4. 論文のスタンダード構成「IMRAD」

論文構成のスタンダードとして知られている「IMRAD」を紹介いたします。IMRADは、それぞれの項目の頭字語になります[1]。

日本語の論文についても、「はじめに」、「方法」、「結果」、「考察」と同様に構成されていることが多いかと存じますので、日本の研究者にも馴染みやすい構成かと思われます。多くの査読付き国際誌はこの構成を採用していますが、他の構成を採用しているジャーナルもございますので、執筆前に投稿先のジャーナルをご確認いただくことを推奨いたします。MDPIも基本的には、この構成を採用しておりまして、原著論文(Article)の場合は、IMRADにConclusionsという項目が最後にありますので、「IMRADC」となります。各項目での要点については、本シリーズのNo. 3、No. 4にてご紹介いたします。No. 2では、タイトルやアブストラクトの作成とキーワードの選択などについてご紹介いたします。

5. まとめ

『英語論文を執筆する上で知っておきたいこと』シリーズ第一弾の要点をチェックリストにいたしましたので、ご活用いただけましたら幸いです。より深く「scientific writing」を学ばれたい方は、以下の参考文献もヒントにしてみてください。

ご一読いただきありがとうございました。弊社へのご要望やご質問などございましたら、お気軽に info-tokyo@mdpi.com までご連絡ください。


参考文献

1. Gastel, B.; Day, R.A. How to Write and Publish a Scientific Paper, 8th Edition; Greenwood: Santa Barbara, CA, USA, 2016.

2. Kinoshita, K. 理科系の作文技術 (in Japanese); 中央公論新社: Tokyo, Japan, 1981.

3. Cutts, M. Oxford Guide to Plain English, 2nd Edition; Oxford University Press: New York, NY, USA, 2007.