学術サポート_イタリック体

イタリック体の使い方

科学論文のなかではよくイタリック体が使用されますが、論文を書き始めたばかりの方で、その使い方を熟知している人は少ないかもしれません。今回は一般的なイタリック体の使用方法についてお伝えします。

引用や強調には?

引用や強調のためについイタリック体を使いたくなってしまいますが、「必ずしも必要ではない」というのが通説です。

人文科学系の雑誌の場合、長い文章でブロックとして区切られている引用や、外国語で書かれた言葉にイタリック体を使用することが許容されることもあります(多くの場合、引用符とともに使われます)が、一般的には必要ありません。

出版物のタイトルには?

書籍、定期刊行物、新聞のタイトルにはイタリック体を使用しましょう。例えば、”I would like to be published in The New York Times”とするのがよいでしょう。イタリック体にすることによって、著者が出版物について話していることが明らかになります。下の2つを見比べてみてください。

“As found in Nature.” (自然界にあるように)

“As found in Nature.” (Nature誌にあるように)

もし斜体を使っていなければ、誤解を招く可能性があります。

ラテン語用語には?

これはとてもよくある質問なのですが、「ケースバイケースです」とお答えせざるを得ません。特定の雑誌では、ラテン語をすべて斜体にしても問題ないかもしれませんが、そうでない雑誌もあります。一般的なルールは存在していて、長い間英語で一般的に使われてきた”et al. “などのラテン語はイタリック体にしないと考える雑誌が多いです。例えば、

ー“in vitro” / “in vivo” / “ex vivo”

ー“a priori” and “a posteriori”

ー“ca.” or “c.” and “vs.” or “v”.

ーetc.

などもイタリック体にしないことが多いです。

一方、属名/種名/亜種名や/動物/植物/微生物などの名称はイタリック体で表記する必要があります。例えば、犬のCanis familiarisやgenus Canisはともにイタリック体ですし、細菌のEscherichia coliもそうです。時には、筋肉群もイタリック体で表示されることがあります。

遺伝子やタンパク質には?

遺伝子やタンパク質の論文では遺伝子はイタリック体で、タンパク質はそうでないと覚えてください。とても厄介なルールなので、ご自身の研究に関わるすべての遺伝子とタンパク質のリストを保管しておくことをおすすめします。

変数には?

変数はほとんどイタリック体で表記されます。

例えばp値、サンプルサイズのn、温度のT、平面のPはイタリック体です。ACSやChicagoなどのスタイルガイドでは、それぞれ変数の扱い方が若干異なるかもしれませんが、多くの科学雑誌がアメリカ化学会(American Chemistry Society)のスタイルガイドに準拠しています。一般的には下記の変数もイタリック体です。

ー軸(例えば、x軸とy軸)

ールイス数 (Le)

ーマッハ数 (Ma)

ー定数 (例えば、重力加速度のgなど)

数えればきりがないのですが、特定の研究分野(計量経済学、数学、結晶学など)には、イタリック体を使うべき変数とそうでないもののルールがある場合もあるようです。

以上、今回はイタリック体に関する一般的なルールをお伝えしましたが、分野やジャーナルによって扱い方に違いがありますので、投稿予定の雑誌のスタイルガイドをあらかじめ確認しておくとよいでしょう。MDPIのスタイルガイドはこちらから入手できます。

 

〜イタリック体と斜体のこぼれ話〜

イタリック体と斜体は違うということをご存知ですか?

斜体は斜めに引き伸ばしただけのものなので、基本的にはどのような文字列でも斜体にすることができます。ですが、イタリック体はフォントファイルの中にItalicという書体を含む欧文フォントにしか適用されません。例えば、和文の文字列をイタリック体にすることはできないのです。

「Microsoft Wordで”I”のアイコンを押すと和文もイタリック体になるじゃないか」という声が聞こえてきそうですが、実は”I”のアイコンを押すと、Italic書体のあるフォントは、「イタリック体」に、ないフォントは「斜体」にMicrosoft Wordが自動変換しているのだそうです。

本記事はMDPIの英語ブログ『How to Use Italics』を参考に作成したものです。元記事はこちら

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