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プレプリントは未来のオープンアクセス出版になり得るか

Preprints.org マネージングディレクター、Mila Marinkovic氏に聴く〜

ペイウォールから解放され、研究論文が迅速に出版・閲覧・利用できればなんて素晴らしいことでしょう。

プレプリントは、まさにそれを可能にします。プレプリントとは、査読プロセスを経ない研究論文で、通常の研究論文よりも早く出版されるため、著者は最新の研究を公開することができ、読者はそれをすぐに閲覧・利用できるのです。

OASPAのウェビナー「So can publishing respond to a crisis? 」でも取り上げられたように、COVID-19の大流行という危機的状況下で、プレプリントの必要性が浮き彫りになりました。COVID-19と同様、環境変動の危機への対処も急務ですから、持続可能な開発のために環境科学分野においてもプレプリントの重要性がより高まってくるでしょう。

しかしながら、プレプリントにはいくつかの問題点もあります。APEのカンファレンス「The Future of the Permanent Record」でも強調されたように、プレプリントは読者からのフィードバックを受け付けているものの、徹底した査読プロセスを経ていません。十分に検証されていないプレプリントの結論がひとたび報道機関やソーシャルメディアに取り上げられると、誤解を招く情報やフェイクニュースの拡散につながる危険性を伴います。

本日は、MDPIが運営するPreprints.orgのマネージングディレクターであるMila Marinkovic氏に、プレプリントの世界について専門的な立場からの意見を聞いたインタビューをご紹介します。

プレプリントの重要性は何ですか?

プレプリントは、共同研究や研究成果の幅広い普及を目指す、オープンサイエンスの精神と非常に密接な関係があります。研究者と科学全体の進歩の両方に有益だと考えています。

Preprints.orgはどのように機能するのですか?

Preprintsプラットフォームは、研究成果の初期段階の利用を可能にすることを目的としており、著者が自分の研究を迅速に共有できるようにするものです。プレプリントとは、まだ査読を受けていない、あるいは学術雑誌に掲載されていない学術論文のことです。Preprintsプラットフォームで論文が公開されると、コメントやフィードバックを受けることができ、Google Scholarやその他のオンラインデータベースにすぐにインデックスされます。DOIがつくことにより引用が可能になります。

現在、公開されるプレプリント論文数は急速に増加しており、この傾向は今後も続くと予想されます。また、ワーキングペーパー/プレプリントをサポートする出版社も増えています(こちらから確認できます)。

今後、プレプリントはどのように発展していくと思いますか?

プレプリントは間違いなく、学術コミュニケーションツールとしてますます存在感を増していくでしょう。私たちは、これまでの出版界の慣習がデジタルの世界へと移行するのを目の当たりにしています。プレプリントは、科学的なアイデアや情報を迅速に広めるための有効な手段なのです。

プレプリントのデメリット(査読がないことによるフェイクニュースなど)、またその対策としてMDPIではどのようなことを行っているのでしょうか?

確かにPreprints上のコンテンツは査読されてはいませんが、MDPIに投稿されたすべてのプレプリントは、オンライン公開前にその分野の知識に確実に貢献するものであるかチェックを受けています。また、Preprints専用のアドバイザリーボードがあり、編集部が専門家の意見を必要とする場合には、常に相談をしています。

査読を経ていないため、Preprintsで発表された論文の中には学術的な問題があるかもしれません。しかし、査読を経たからといっても、報告されている知見が間違っていないとは限りません。

プレプリントがオープンアクセスであることがなぜ重要なのですか?

プレプリントは研究結果を迅速かつ広く普及させることが目的なので、オープンアクセスであることは非常に重要です。DOIを付与することで、プレプリントはジャーナルに掲載される前であっても利用可能になり、かつ、ジャーナルに掲載される際にはプレプリントと紐付けができます。

※プレプリントの投稿方法とよくある質問(FAQ)は、Preprintsウェブサイトに掲載されています。ご投稿予定の論文がプレプリントとして他の場所に公開されている場合、MDPIは該当の論文が正式に出版されていないことを確認する必要がありますので、その旨お知らせください。

本記事はMDPIの英語ブログ『Preprints—The Future of Open Access Publishing?』を元に作成したものです。元記事はこちら

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