「 ほや 」の可能性
みなさまは「ほや」をご存じでしょうか。「海のパイナップル」や「ほや貝」などといわれることもありますが、実は人間と同じ脊索動物の仲間です。食べれば苦・甘・塩・旨・酸の5味すべてをあわせもち、動物なのにセルロースを産生できるという、アメージングな生き物である「ほや」。今回はそれだけじゃない「ほや」のすごさについてご紹介します。
老化改善の可能性
「ほや」にはプラズマローゲン(Plasmalogen)が多く含まれています。「ほや」から抽出したプラズマローゲン(Plasmalogen)を老齢のマウスに与えると、なんと認知能力が向上し、さらには脱毛が減って毛並みがつやつやになったという研究結果が報告されています。老化防止に効果的といわれる食材は、メディアなどでこれまでいろいろと紹介されてきました。しかし、「ほや」由来のプラズマローゲン(Plasmalogen)には、すでに老化したマウスの症状改善に効果があったという点がポイントです。
治療薬としての期待
「ほや」から抽出された化合物には高い抗腫瘍性・抗ウィルス性のある生理活性が確認されており、悪性軟部腫瘍などに使用されるトラベクテジンは元々は「ほや」由来の抗がん剤だそうです。現在も「ほや」抽出化合物の開発研究は広く進められています。抗がん剤そのものとしてだけではなく、その他の化学療法との併用や、機能性栄養補助食品としての効果が期待できるとする研究や、ウィルス・細菌・真菌感染症の治療薬としての可能性を示唆する研究もあります。
殻から次世代エネルギーデバイスの高性能触媒材料へ
「ほや」をおいしくいただいた後に、どうしても残ってしまう「ほやの殻」。この殻にはセルロースナノファイバーが多く含まれるそうです。これを炭化して、同じく捨てられてしまう畜産物の血液に含まれる鉄窒素リンに混合して焼成すると、ナノメタルを用いた電極触媒に匹敵する性能を持つ「ナノ血炭」が生成できるという研究報告があります。捨ててしまうもの同士を掛け合わせて価値あるものが生み出されるとは、大変サステナブルです。
いかがだったでしょうか。こんなにも有能な「ほや」ですが、実は岩手県や宮城県を中心に一つ150円くらいで売られてる、たいへんお値打ちな食材です。生食もいいですが、蒸したり干したりさらにはカレーパンに入っていたりと、レパートリーも豊富です。また、日本酒とも相性がよいといわれていますので、「ほや」が持つ無限の可能性に思いを馳せながら、日本酒のお供に是非一度召し上がってみてはいかがでしょうか。