最新の研究によると、ジュースクレンズは私たちが思うほど健康的ではないかもしれない

ジュースクレンズの歴史

ジュースクレンズは1990年代後半から2000年代初頭にかけて流行し、2006年には歌手のビヨンセがこのダイエットを実践したことで大きな注目を集めました。このダイエットは、「体のデトックスが必要である」という誤った認識に基づいており、西洋の美容トレンドに影響を受けた食事法の一環として広まりました。特に女性の間で、減量が重要視される風潮の中で人気を博しました。

また、『The Master Cleanse Coach』の著者である起業家ピーター・グリックマンも、ジュースクレンズが毒素を排出し、減量やエネルギー向上につながると主張し、その健康効果が広く信じられるようになりました。

確かに、ジュースクレンズを実践すると摂取カロリーが減るため一時的に体重が減少します。しかし、ジュースのみの食事では、たんぱく質や食物繊維といった重要な栄養素が不足し、体が正常に機能するために必要な栄養が得られません。そのため、ジュースクレンズの健康効果は疑問視されています。

今回の新しい研究では、ジュースクレンズが腸内細菌叢の組成を大きく変化させることが明らかになり、減量を目的としたこのような食事法が必ずしも健康に良いとは限らないことが示唆されています。

腸内細菌叢の重要性

腸内細菌叢とは、腸内に存在する細菌や酵母などの多様な微生物の集合体です。その組成は、食事によって変化し、健康や病気と密接に関連しています。

腸と脳は「腸-脳軸」として相互に影響を及ぼしており、腸内環境とメンタルヘルスとの関連性も研究されています。そのため、特に厳格な食事制限が腸内細菌叢にどのような影響を与え、ひいては健康全般にどう影響するかを理解することが重要です。

ジュースクレンズが腸内細菌叢に与える影響

この研究では、14名の参加者を対象に、以下の3つの食事グループに分けました。
– ジュースのみのグループ
– ジュースと食事の併用グループ
– 植物性のホールフードのみのグループ

研究者は、参加者の便（腸内細菌叢）、唾液、頬の内側の拭き取りサンプル（口腔細菌叢）を採取し、食事開始前、開始直後、開始から14日後の3つのタイミングでRNAを解析し、腸内細菌叢の変化を比較しました。

その結果、ジュースのみの食事を続けると、腸内および口腔細菌叢の組成が変化し、炎症を引き起こしやすい細菌が増加することがわかりました。これらの細菌の増加は、腸の透過性の上昇や認知機能の低下とも関連があると考えられています。

「食物繊維の少ないジュースを大量に摂取すると、腸内細菌のバランスが崩れ、炎症や腸の健康悪化などの悪影響を引き起こす可能性があります。」
— メリンダ・リング博士

多様な食事の価値

食物繊維は、健康にとって不可欠な栄養素です。食物繊維の摂取量が少ないと炎症性疾患のリスクが高まり、逆に十分な摂取は大腸がんのリスク低下と関連があります。

ジュースは、本来果物に含まれる食物繊維が取り除かれているため、ジュースクレンズを食事の代替とすることは医師によって推奨されていません。さらに、食物繊維がない状態では、果物の糖分が急速に吸収され、血糖値の急上昇を引き起こします。また、腸内の有益な細菌が繊維を栄養源とするため、繊維不足により善玉菌が減少し、有害な細菌が増殖しやすくなります。

同じ研究では、ジュースクレンズを始める前に行った「除去食」が腸内細菌叢に良い影響を与えたことも明らかになりました。この食事は、オーガニックのホールフード（食物繊維を多く含む新鮮な野菜や果物、卵、水8杯）を中心とし、カフェイン、アルコール、加工糖、赤身肉、グルテン、乳製品を避けるものです。

その結果、腸内の「善玉菌」であるFaecalibacterium prausnitziiが増加し、これは腸の健康を促進し、大腸がんなどの疾患を予防する役割を持つブチレートという物質を産生することが確認されました。

流行のダイエットが健康に与える影響を科学的に検証することは、より良い食生活を選択するために重要です。健康を維持するには、たんぱく質や脂質、ビタミン、ミネラルなどの多様な栄養素を含むバランスの取れた食事を心がけることが大切です。

※本記事はMDPIの英語ブログを元に作成したものです。元記事はこちら。

By MDPI|March 31, 2025