デジタルデトックスはなぜ必要なのか

スクロールする親指、絶え間ない通知、そして情報の洪水。私たちのスマートフォンは時に疲れさせる存在に感じられます。実際、スマホ疲れは、私たちがスマートフォンにますます依存するにつれて、急速に一般化しつつあります。世界的には、人々は1日に平均して58回スマホを確認しています。つまり、これは58回もメッセージやニュース、SNSコンテンツといった新しい情報に触れる機会があるということです。研究は、私たちの脳がこの情報量に対処しきれないこと、そしてデジタルデトックスが解決策となり得ることを示し始めています。

スマホ疲れとは?

現在市場で手に入るスマートフォンは、非常に高度な技術製品です。最新のスマホはどれも数千もの機能を備えた多数のアプリに対応しており、ユーザー体験を向上させ、生活を便利にするとされています。さらに、SNSアプリはAIによって作られたアルゴリズムを統合し、終わりのない魅力的かつ中毒性のあるコンテンツを提供しています。

現在の主要なSNSにはInstagram、Facebook、X(旧Twitter)、Instagram、TikTokがあり、これらは過去10年間でスマホ使用を大幅に加速させました。

すべての道具と同様に、スマートフォンの進化自体が「良い」または「悪い」というわけではありません。それらをどのように、どれだけ使うかが、私たちに与える影響を決定します。スマホ疲れとは、スマートフォンの過剰使用と情報過多によって引き起こされる疲労感を表す新しい用語です。この現象は、不安感、燃え尽き、全体的な疲労として現れることがあります。

画面を見すぎると心の健康に悪影響

2004年のFacebook設立や2007年の初代iPhone登場以降、SNSとスマホの使用はわずか20年足らずで急増しました。しかし、その心理的影響についての研究はまだ初期段階にあります。科学者たちは現在ようやく、スマホやSNSの長期的影響についての予備的な結論を出し始めており、これらはアンケート調査や縦断研究、文献レビューに基づいています。

スマートフォン依存は、睡眠の質を著しく損ない、神経系や筋骨格系の問題など、多くの二次的な問題を引き起こすことがわかりました。

これは、オープンアクセスジャーナルHealthcareに掲載された研究でも示されています。著者らは韓国の学生におけるスマホ使用の悪影響に関する系統的レビューを行い、スマホ依存が睡眠障害と強く関連し、その結果として神経や筋肉の問題を引き起こしていることを明らかにしました。

睡眠の重要性

睡眠の重要性は決して過小評価すべきではありません。多くの研究が、テクノロジーが良質な睡眠を妨げることを示しています。良質な睡眠は、健康を維持し、心身を整えるために不可欠です。

Editor’s choiceとして掲載されたレビューは、睡眠が感情調整にいかに重要であるかを解説しています。不眠やその他の睡眠障害は、特に思春期において感情のコントロールを難しくし、不安やうつ病といった心理的疾患のリスクを高めます。

研究によれば、就寝前のスマホ使用は睡眠に深刻な悪影響を与え、身体的・精神的な問題につながることがあります。

さらに、最新の研究では、SNSを寝る前に延々とスクロールすることの悪影響が示されました。18〜30歳の830人に対し、SNS使用(頻度・時間・感情的投資)についてアンケートを実施したところ、使用頻度が高く、感情的にのめり込んでいるほど、睡眠障害が深刻になることが明らかになりました。

情報過多が健康を脅かす

いまだに新聞を読む人もいますが、若い世代ではデジタルメディアが主流です。多くの人が、ニュースをSNS経由で得るようになりました。しかしここでの問題は、「常に、すべてのこと」について情報を得ている状態が生じてしまう点です。

情報を摂取する時間帯を意図的に設定することで、精神的な明晰さを保ち、特に就寝前など準備ができていないときにショッキングなニュースを見ないようにすることが重要です。戦争、死、気候変動、災害、政治などのテーマは、強く否定的な感情を呼び起こします。

研究者は、SNSの適切な使い方や責任ある情報消費、無意識な使用を減らすための自己制御を学ぶべきだと呼びかけています。

あるレビューでは、情報過多が認知能力に与えるストレスや長期的な悪影響について警鐘を鳴らしています。情報過多は不安、混乱、疲労を招くだけでなく、個人の私生活や仕事にも深刻な影響を与えることがあります。

なぜやめられないのか?中毒の心理

スマートフォンは今や、食事の注文や乗車券、カレンダー、クレジットカード管理など、あらゆる日常作業に使われています。この依存度の高さが、意図せずともSNSやゲームといった中毒性の高いアプリへとつながっていきます。

SNSは中毒性があるように設計されており、それに気づかないまま依存が進んでいることが多いです。

私たちの脳は、SNSによって得られるドーパミンによる快感を学習しており、新しい情報が良いものであれ悪いものであれ、嬉しいと感じます。そのため、SNSのアイコンを見るとついタップしてしまうのです。SNSは、まさにこのような心理を狙って設計されています。

ショッキングな内容を見続けることは、特に心の準備ができていない時期には、精神的な健康に悪影響を及ぼす可能性があります。罪悪感、絶望、怒り、悲しみ、不安といった感情が積み重なり、健康を害する恐れがあります。

研究者は、SNSの使用方法を学び、適切な情報摂取と自己コントロールを身につけることの重要性を強調しています。

研究が示すデジタルデトックスの必要性

ある研究は、Psychiatry Internationalに掲載され、スマホ依存への意識の重要性を強調しています。この研究では、150人の参加者に対して観察を行い、高い依存度、睡眠の質の低下、生産性の低下が確認されました。興味深いことに、女性、学生、無職の人々は特に高い影響を受けており、デジタルデトックスの必要性が強く示されました。

さらに、Behavioral Sciencesに掲載された研究では、SNSの使用を制限する「デジタルデトックス」が、スマホ依存に苦しむ人々の健康に良い影響をもたらすことが明らかになりました。

スクリーンタイムを管理するためのデトックス

とはいえ、スクリーンタイムを減らすのは簡単なことではありません。以前のブログ記事では、スマートフォンがなぜ中毒性があるのか、そしてスクリーンタイムの管理方法について、研究に基づくアドバイスを紹介しました。

研究によれば、SNSを急に断つ「完全断ち」は逆にストレスやネガティブな感情を増やす可能性があるとされています。そのため、過度なスマホ使用による悪影響を軽減する実践的な対策として、以下のような方法が有効と考えられます。

1. SNS通知を管理し、コンテンツを見る時間を決める:ニュースアプリやSNSの通知をオフにすることで、不要な情報の摂取を避けることができます。また、1日の中で「スマホを使う時間帯」を決めておくことで、無意識のスクロールを減らすことができます。

マインドフルネスはストレスを軽減し、「今ここ」に意識を戻すことで不安感を和らげる効果があると研究で示されています。

2. メンタルヘルスを意識してマインドフルでいること:グロテスクな内容や暴力的な情報の連続的な摂取は、特に心の準備ができていないときに精神的健康に悪影響を及ぼします。罪悪感、絶望、怒り、悲しみ、不安といった感情が蓄積されるため、情報を「どれだけ、いつ」見るかを意識して管理することが重要です。

研究によれば、自然の中で過ごす時間のようなマインドフルネス活動は、ストレスや不安の軽減に効果があります。

3. ヨガ、日記を書くこと、自然の中を歩くといったマインドフルネス活動を行うことも、ストレス解消に非常に効果的です。特にストレスフルなニュースを見たあとや、感情的に消耗したときには有効です。マインドフルネスがストレスを軽減するという研究結果もあります。

今後の研究について

デジタルデトックスの重要性はますます高まっており、人々が日常の中で健康的にスマートフォンを使うための指針となっています。研究によれば、若者たちはこのような戦略に前向きに反応しており、今後の改善に希望をもたらしています。

また、スマートフォンの使用制限や禁止措置は、世界中で子どもたちを対象に議論されています。研究では、スマホがいかに学習を妨げるかが示されており、教育現場への悪影響も懸念されています。

しかし、これらの規制にはいまだに賛否両論があり、その効果を検証するにはさらなる縦断的研究が必要です。また、スマホデトックスの方法が健康にどのように寄与するかについても、より多くの研究が求められています。

このような研究は、Behavioral SciencesPsychiatry InternationalBrain SciencesといったMDPIのオープンアクセスジャーナルで読むことができます。あるいは、こちらのジャーナル一覧からもアクセス可能です。

※本記事はMDPIの英語ブログを元に作成したものです。元記事はこちら

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